
BC007 アフタートーク&倉下メモ
03/12/21 • 12 min
倉下メモ
冒頭に紹介された「融合」というキーワードが気になりました。以下の本も気になっています。
『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』
フードテックやフィンテックなどは、食品業界や金融業界とテクノロジーの融合だったわけですが、そうしたhogeテック的なものが増えてくると、今度はそれぞれのhogeテックが融合して、さらに新しいものを生み出していく、という捉え方は個人的に魅力的です。ただし、そのようなボトムアップ的変化は、最終的にどうなるのかはまったくわからない、という見通しの悪さも伴う点には注意が必要そうです。
倉下の個人的な感想としては、たしかにテクノロジーはとんでもなく進化していくだろうけども、「それって本当に大丈夫なの?」と問う姿勢を欠いてはいけないなと感じた次第です。
倫理×テクノロジーの ethitech が必要なのかもしれません。
たぶんそれは、VRによる「仮想的な現実体験によって、いかに倫理観を醸成するのか」という方向で実現されるのでしょう。
次の本の候補
『ヒューマン・ネットワーク』(←こっちになりました)
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倉下メモ
冒頭に紹介された「融合」というキーワードが気になりました。以下の本も気になっています。
『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』
フードテックやフィンテックなどは、食品業界や金融業界とテクノロジーの融合だったわけですが、そうしたhogeテック的なものが増えてくると、今度はそれぞれのhogeテックが融合して、さらに新しいものを生み出していく、という捉え方は個人的に魅力的です。ただし、そのようなボトムアップ的変化は、最終的にどうなるのかはまったくわからない、という見通しの悪さも伴う点には注意が必要そうです。
倉下の個人的な感想としては、たしかにテクノロジーはとんでもなく進化していくだろうけども、「それって本当に大丈夫なの?」と問う姿勢を欠いてはいけないなと感じた次第です。
倫理×テクノロジーの ethitech が必要なのかもしれません。
たぶんそれは、VRによる「仮想的な現実体験によって、いかに倫理観を醸成するのか」という方向で実現されるのでしょう。
次の本の候補
『ヒューマン・ネットワーク』(←こっちになりました)
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BC007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。
第7回の本日は『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』について語ります。
あらゆる分野の「未来」が網羅された1冊
一言で言って、非常に夢溢れる、これからの未来が楽しみになる本でした。(そもそもこういう本が好き)
細かな翻訳で気になる点や、あえて詳細を省略している(不都合だからなの?伝わりやすくするためなの?)と感じる点などはありましたが、楽しむ分には問題はないかな。
対象とする範囲が非常に広いために、これだけボリュームがある書籍でも、1つ1つの分野の説明は「ライト」な感じです。
その分野の本を多少知っていれば「だいたい知ってる」って感じになりがちですが、1冊の本でこれだけ全体がまとまっている」ということに価値がある本だと思います。
ついにクルマが空を飛ぶ時代が来る
本の始まりは、UberのCPO ジェフ・ホールデンが「空飛ぶ車を作る」という話をするところから。
1960年代や70年代に創造した21世紀って、全然今と違うよね。空飛ぶ車とか、お手伝いロボットとか、ボタンを押したら料理を作ってくれるとか、そういうのってどこ行ったの?
著者は、そういう時代が「すぐに来る」と言っています。
なぜなら、これからさらに変化が加速するから。
さまざまな技術がデジタル化され、技術は、エクスポネンシャルな加速(指数関数的な加速)をし、それらの技術が「コンバージェンス」(融合)することで、進化がより加速する。
本に書いてる横文字をそのまま並べるとなんかアレなんですが、この「指数関数的な加速」と「技術の融合」というのがこの本が伝える「加速が加速していく」大きな理由です。
今まではCPUに「ムーアの法則」というのがあって、コンピュータは1.5年で性能が2倍になる、ということが起こっていた。このムーアの法則というものが、デジタル化からの進化によって「ありとあらゆるジャンルで適用されるようになる」
振り返ってみると、10年前に10万円で空飛ぶドローンが手に入る時代は想像もしてなかったし、10年前にまさか囲碁で人間がコンピュータに負けるのが今実現するなんて思ってもみなかった。(20年前には、コンピュータが囲碁で人間に勝つにはあと100年かかる、などと言われていた気がする)
この10年で「信じられない変化」がすでに起きていることを考えたら、これからの10年がもっと信じられない変化が起こっても、確かにおかしいことはない。
VRと3Dプリンティング、パーソナライズ
本全体を通して最も多くの分野に影響を与えそうなものが、VRと3Dプリンティング、パーソナライズいう3つのキーワードでした。
VRによって教育も買い物も「その場で体験ができる」ようになり、広告は今までと次元が違うものが現れる。
不動産なんかはVRで内見ができるようになる、という変化だけでなく「その場で体験ができる」時代になることで「そもそものいい土地」というものの定義すらも変わってしまう。
3Dプリンティングはすでにありとあらゆる材料でプリントが行えるようになっており、人間の臓器も、食べ物も、家も「プリント」で作れるようになっている。1
また、これらに「パーソナライズ」という要素が加わることで、教育ならば生徒一人一人に最適化した授業を与えられるし、広告も「超パーソナライズされたもの」が配信可能(ディストピア?)
一人一人に最適化した移植用臓器などは低コストで3Dプリンターで作れる。保険や金融も個人に最適化され、パーソナライズが進めば「保険」という概念も無くなってしまうかもしれない。
医療と遺伝子
そして個人的に最も衝撃が大きかったのが「医療」の分野。
本の中では9章の「医療の未来」に加えて、次の10章では寿命延長というものについて丸々1章使ってさまざまな寿命延長の方法について書かれています。
現時点で「人はなぜ老化するか」「なぜ死ぬか」ということはかなりの部分がわかってきている。そして、わかってきたということは対策もできるようになってくるということ。
この分野に関しては、自分の知識がほとんどなかったことも関係していると思いますが「マジでもうこんなことできるのか!」という話だらけでした。
確かに、つい100年前は人間は50になる頃には大抵死んでたんだし、原子時代は30歳でもう死んでいた、なんて話も聞く。(平均年齢ではない)
それが今80まで生きるのは普通で、ここから技術が加速するならばまだまだ寿命が伸びる可能性は十分ある...
個人的には技術の進歩は可能な限り見てみたいので、長生きできることは嬉しいんですが、人生設計というものは確実に考え直さなければならなくなりそう。
60で引退してあと60年は「余生過ごす」ではないよな...
100歳の人を再び60歳に戻すこと、すなわち人間の生存期間を大幅に延ばすことは、すでに「できるかどうか」から「いつできるか」の問題に移った。
章の最後に書かれてるこんな言葉を見ると、本当にいろんなことに「備える」必要があることを思い知らされます。
2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ | ピーター・ディアマンディス, スティーブン・コトラー, 山本 康正, 土方 奈美 |本 | 通販 | Amazon
金属、ゴム、プラスチック、ガラス、コンクリート、細胞、皮革、チョコレートなどはすでにプリントできるらしい。 ↩︎
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BC008『ヒューマン・ネットワーク』
今回は『ヒューマン・ネットワーク』について。
副題:人づきあいの経済学
原題:『The Human Network: How Your Social Position Determines Your Power, Beliefs, and Behaviors』
著者:マシュー・O・ジャクソン
スタンフォード大学教授、サンタフェ大学客員教授。プリンストン大学で学士号、スタンフォード大学で博士号を取得。主な関心はゲーム理論、ミクロ経済学、社会・経済に関するネットワークの科学など。2015年ケネス・アローやリチャード・セイラーも受賞した、ライク・ラズロ・カレッジが与える2015年度ジョン・フォン・ノイマン賞を受賞。
*書籍のリンクはすべてAmazonアフィリエイトのリンクです。
どんな本?
人間的ネットワークの特徴とその形成のメカニズムを論じ、さらに個々の人の振るまいがいかにそうしたネットワークの影響を受けるのかを検討した一冊。
倉下お薦めのネットワーク論系書籍
『ソーシャル物理学』
『ウェブはグループで進化する』
『経済は「予想外のつながり」で動く』
ネットワークに注目
個々人の特性に注目するのではなく、その人が所属しているネットワークに注目することは、人の行動を一つの系として捉えることになる。上記で紹介した本は、そうした観点を持つが本書は、そうしたネットワークが「いかに形成されるのか」も踏まえて検討している点が興味深い。
ネットワークの種類
一口にネットワークといってもその形はさまざまであって、考え得るバリエーションは多岐にわたる。たとえば、30人のクラスの中でいかなるネットワークが築かれるかは、「誰も友達ではない」から「全員が全員と友達」であるの間に巨大なバリエーションを持つ。友達のペアは435個考えられ、そのペアの組み合わせは、2の435乗である。
そうしたネットワークを個別に検討することはできないが、それぞれのネットワークの重要な特性に注目し、パターンを想定することはできる。
ありうる関係のうちどのくらいの割合が実際に結ばれているか、参加者の間で関係が均等に結ばれているか、どこかに偏りがあるか、に基づいて分類するのはその例だ。そうしたパターンを追求することで、経済的不平等や非流動性、政治の分極化、金融危機の伝播などの問題も解明しやすくなる。
物事をこうした視点で捉えることを「ネットワーク思考」だと呼ぶならば、本書はその思考法を開示するための一冊だと言える。
外部性
重要な話は盛りだくさんだが、一番重要なのは「外部性」の概念である。ネットワークの一部であるとき、ある決定や行動はネットワークの他の要素に影響を与える。
たとえば、倉下は五藤さんにヘッドセットを薦めてもらい、それを買った。すると誰かがそのヘッドセットを見て、「あっ、あれいいな」と思う可能性が出てくる。その人がそれを買うと、さらに「あっ、あれいいな」と思う可能性が出てきて......という感じで、個人の決定がネットワーク全体に広がっていくことが起こり得る。
むしろそのような影響が皆無であるならば、ネットワークを研究する価値はない。外部性があるからこそ、ネットワークは研究対象として興味深く、また価値があるものになる。
一人の人間の選択は、基本的に自由であり、その選択は最大限尊重されるべきであろう。一方でそれは、一人の人間の選択が外部性を持たないことを意味はしない。社会制度・道徳・倫理観といったものが要請されるのもこうした側面があるからだろう。「自分の人生なんだから、自分勝手でいいじゃないか」と言い切れない視点がネットワーク思考には含まれる。*しかし、共同体を至上におく共産主義とも異なるのがポイントである。
ネットワークの現れ方の違い
一人の人間がたくさんの人と交流を持っていても、それがインフルエンザウイルスなのか、HIVウイルスなのかによって立ち現れるネットワークは異なる。また、流れるものが情報の場合でも、政治的信念と明日の天気とお得なセール情報と銀行倒産のうわさ話では、流れ方が異なる。
ある面において一つのネットワークが現れたとしても、それが万事に通じるわけではない。流れるものによって、現れ方が変わってくる。
また、ネットワーク上のポジション(≒持ち得る力)も、単純には測定できない。友達が多いのか、友達が多い人を友達に持っているのかは、単純にどちらが「すごい」のかはわからない。そこを流れるものによって変わってくる。この点において、「フォロワー数がn万人ならなんちゃら」と考えるのはあまりに単純すぎることがわかる。
ネットワークの規模だけでなく、その性質に注目することは欠かせない。
ネットワークと個人の立ち振る舞い
本書は面白い話が多いのだが、深刻なものとして個人の立ち振る舞いや可能性がその人が属するネットワークに強い影響を受ける、という点がある。この話は、ピエール・ブルデューのハビトゥスを想起させるが、おおむね似通っていると言ってよい。
ハビトゥスは、行動の傾向(気質のシステム)にフォーカスしているが、入手できる情報やそうした情報に対する評価もネットワークからの影響を受ける点が本書では指摘されていて、それが極めて重要だろう。なぜならば、経済学が想定する「合理的な経済人」や、ジョン・ロールズの「無知のヴェール」が根本的に無理な要請である可能性が示唆されるからだ。
とは言え、本書でそれが論じられているわけではなく、あくまで倉下の観点である。
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